
- 相談役と顧問はどっちが上の役職なのか知りたい…
- 「偉い人」ということ以外、違いがよく分からない…
- ぶっちゃけ、給料はいくらくらい貰っているの?
会社の中に存在する「相談役」や「顧問」という役職。名刺交換の際や組織図を見たときに、どちらに対してより丁寧に接すべきか迷った経験はありませんか?
実は、これらの役職は部長や課長といった一般的な役職とは異なり、その「定義」が会社によって大きく異なります。そのため、単純な上下関係を比較するのは意外と難しい問題なのです。
この記事では、相談役と顧問の役割の違いから、気になる報酬の実態、さらには近年の廃止・縮小のトレンドまで、公的な根拠を交えながら分かりやすく解説します。
- 相談役と顧問はどっちが上なのか、判断の基準が分かる
- 報酬の決まり方や相場、具体的な調べ方が分かる
- なぜ今、大企業を中心に制度の廃止・縮小が進んでいるのか背景が分かる
相談役と顧問はどっちが偉い?
まず多くの人が気になる「格付け」の問題ですが、法律や公的な決まりがあるのでしょうか。結論からお伝えすると、これらは組織の運用によって順位が入れ替わる特殊なポジションです。
結論は「肩書きだけで上下は決まらない」です
相談役と顧問は、会社法で定義された役職ではありません。取締役や監査役とは異なり、会社が独自に設置する「任意」の役職です。
そのため、役職名だけで「相談役の方が顧問より格上」と一律に決める法律上のルールは存在しません。実務では、その人が「元々どんな立場だったのか」や「社内でどんな影響力を持っているか」という実態によって見え方が変わります。
よくある誤解
一般的には「相談役=元社長などのOBで一番偉い」「顧問=外部の専門家」というイメージを持たれがちです。しかし、会社によっては「名誉顧問」が最高位だったり、相談役がただの窓際職だったりと、実態はバラバラなのが現実です。
社内での「偉さ」を決める現実的な見方
もし、目の前の相談役や顧問のどちらが実質的な実力者か判断したい場合は、役職名よりも以下の3つのポイントに注目してみてください。
- 指揮命令ラインに入っているか:現役の役員や社員に対して、直接的な指示出しや指導を行っているか。
- 意思決定に関与しているか:経営会議などの重要な会議に出席しているか、最終的な決裁に意見が反映されるか。
- 「誰が就いているか」:元社長・元CEOなどの「権力者OB」なのか、それとも特定の分野に詳しい「外部の専門家」なのか。
特に元社長が「相談役」として残っている場合、現社長にとっても頭が上がらない存在であり、実質的に社内で最も影響力を持つケースも珍しくありません。一方で、技術的な助言をするための「顧問」は、実務的なサポーターとしての立ち位置が強くなります。
相談役と顧問の違いをもう少し詳しく
上下関係こそ明確ではありませんが、一般的によく運用される「役割の傾向」には違いがあります。両者の特徴を比較表にまとめました。
| 項目 | 相談役 | 顧問 |
|---|---|---|
| よくある人選 | 社内出身(元社長・元CEOなど) | 社内出身も社外の専門家もあり得る |
| 役割の傾向 | 経営陣への助言、対外的な信用、引き継ぎ支援など | 専門領域の助言(法務・財務・人事・技術・海外展開など) |
| 位置づけ | 名誉職・長老的な意味合いが強い | 実務寄りのアドバイザー・外部ブレーン |
| 勤務形態 | 非常勤が多いが、専用の個室があることも | 月数回の訪問や、必要時のスポット対応など |
補足:最高顧問・名誉会長など
会社によっては、さらに「最高顧問」「名誉会長」「特任顧問」といった独自の呼称を設けていることがあります。これらはより象徴的な意味合いを強めるため、あるいは特定の契約を明確にするために使い分けられます。
相談役・顧問の報酬はどれくらい?
「引退したのに高い給料を貰っているのではないか?」という疑問は、時に株主や社員からも向けられる厳しい視点です。その報酬実態はどうなっているのでしょうか。
結論:会社と本人の関与度合いで大きく変わります
相談役や顧問の報酬は、現役時代の給与や、現在の稼働実態に合わせて個別に決定されます。年収数千万円という高額なケースから、交通費程度の無報酬まで、その幅は非常に広いです。
よくある3パターン
- パターン1:名誉職型…元トップに対してこれまでの功績を称え、敬意を示す形。月数十万円程度の報酬がある場合もあれば、完全に名誉のみで無報酬の場合もあります。
- パターン2:助言契約型…専門的な知見(弁護士、会計士、元官僚など)に対して支払われるもの。月額の顧問料や、案件ごとの成功報酬などで運用されます。
- パターン3:関与が深い型…実質的に経営判断に深く関わり、週の半分以上出社するようなケース。現役役員に近い、あるいはそれ以上の報酬が支払われることもあります。
税務上の注意点(かなり大事)
形式的に相談役や顧問であっても、実態として「経営の重要事項に関与している」と判断された場合、税務上は「みなし役員」として扱われることがあります。この場合、現役役員と同様の厳しい税制ルールが適用されます。
報酬を「調べたい」ときの現実的な方法
非上場企業の場合、報酬を知るすべはほとんどありませんが、上場企業であればいくつかの手がかりがあります。
- コーポレート・ガバナンスに関する報告書:元社長等が相談役等に就く場合、氏名や業務内容、勤務条件(常勤・非常勤、報酬の有無)の開示が任意で求められています。
- 統合報告書・アニュアルレポート:企業の透明性をアピールするため、顧問制度の有無やその報酬決定プロセスを記載している場合があります。
- EDINET(有価証券報告書):個人別の金額が出ることは稀ですが、役員報酬の総額や、退職慰労金の項目から推測できることがあります。
相談役・顧問は廃止や縮小が進んだ
かつては「当たり前」だった相談役・顧問制度ですが、現在は逆風が吹いています。多くの有名企業が、この制度を廃止したり、大幅に縮小したりしています。これには明確な理由があります。
きっかけは「ガバナンス報告書」の記載要領改訂です
2018年より、東京証券取引所は上場企業に対し、退任した社長・CEOが相談役や顧問として残っている場合、その情報の開示を促すようになりました。これにより、「なぜその人が必要なのか」を外部に説明する義務が生じたのです。
参考:JPX公式「相談役・顧問等の開示に関する記載要領の改訂について」
なぜ廃止・縮小が進むのか
主な理由は、投資家からの「不透明さ」に対する不満です。
- 「院政」の懸念:退任したトップが裏で経営を操り、現役世代の改革を阻んでいるのではないかという疑念。
- コストの不透明性:多額の報酬や専用車、個室などの維持費が、株主の利益を損なっているのではないかという視線。
- 責任の所在:権限はあるのに、失敗した時の責任を取らない「無責任な実力者」が残ることへのリスク管理。
具体例(公表資料で確認できるもの)
実際に、日本を代表する企業も以下のように動いています。
- 日産:ガバナンス報告書において、原則として相談役・顧問制度を廃止する方針を明記しています。
- 資生堂:取締役会の決議により制度を完全に廃止。経営の透明性を高める姿勢を鮮明にしました。
- トヨタ:かつて60人近くいた相談役・顧問を、現在は1桁台まで大幅に削減。実務への影響力を整理しています。
「定款に書く必要がある」は言い切れません
会社を設立したり運営したりする側からの疑問として、「相談役は定款(会社のルール)に書くべきか?」というものがあります。
結論:会社の判断です(書く会社も、書かない会社もあります)
相談役や顧問は「法定の機関(必ず置かなければならないもの)」ではないため、定款に記載する義務はありません。記載すると変更時に手続きの手間が発生するため、社内規程(相談役選任規程など)で運用するのが一般的です。
会社側が設置するなら、ここを整えると揉めにくい
もし、あなたの会社で新たに顧問を迎えたり、相談役を置いたりする場合は、以下の項目を「言語化」しておくことが、社内外のトラブルを防ぐ鍵となります。
- 選任基準:どのような功績や経歴を持つ人を対象とするか
- 業務内容:具体的に何の相談に乗ってもらうのか(例:月1回の経営助言など)
- 任期:ダラダラと続けないために「1年更新、最長〇年まで」といった期限を設ける
- 報酬:誰が、どのような基準で金額を決定するのか
よくある質問
相談役と顧問、社員はどっちに気を使うべき?
基本的には「元社長や創業者なら相談役」「社外から来た先生なら顧問」というケースが多いです。相手がかつてのトップ(相談役)であれば、現役役員も敬意を払っているはずですので、社員としても最大限の礼節を持って接するのが無難です。
相談役や顧問は「役員」なの?
法律(会社法)上の役員ではありません。あくまで「従業員でも役員でもない、外部委託や嘱託のような立場」です。ただし、税務上は「経営に関与しているか」で役員並みの扱いを受けることがあります。
報酬を知りたい場合、どこを見ればいい?
上場企業であれば、その会社の公式サイトにある「IRライブラリ」から「コーポレート・ガバナンス報告書」を探してみてください。そこに相談役・顧問の氏名と、報酬の有無が記載されている項目があります。
参考資料(一次情報・公表資料)
- JPX(東京証券取引所)「相談役・顧問等の開示に関する記載要領の改訂について」
- JPX「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2023(PDF)」
- 首相官邸「未来投資戦略2017(PDF)」
- 経済産業省「コーポレートガバナンスに関する各種ガイドライン」
- 国税庁「タックスアンサー No.5200 役員の範囲」
- トヨタ公式ニュースルーム(制度変更の年表を含む)

